フッ素樹脂コーティングは、フッ素コート(フッソコート)、フッ素加工(フッソ加工)、テフロン®加工といったように、様々に表現されています。それぞれの処理に使われている塗料や材料により分類してみると、下図のようになります。
図:フッ素樹脂塗料等による分類
上図のうち、フッ素樹脂塗料系と変性フッ素樹脂塗料系は前述した9種類のフッ素樹脂のいずれかを含んでいます。これらの塗料により作られる塗膜はフッ素樹脂の持ついくつかの特性(耐熱性、難付着性、滑り性、耐薬品性)を生かした機能性塗膜として、厨房用品、家電品、OA機器、自動車、半導体製造装置、液 晶製造装置、各種めっき治具等、様々な分野で省力化、自動化に大きな役割を果しています。
また、ほとんどの薬品に溶けないフッ素樹脂に溶剤可溶型フッ素樹脂塗料系とは少しおかしいのですが、分子中にアルキル基などを入れることによって、各種 溶剤に溶けるフッ素樹脂を主成分とした超耐候性塗料として基材の保護と美粧を目的に、自動車、建物、橋梁などの塗装に使われています。
最後に、よく虫歯予防に使われている「フッソ」はフッ素化合物(正確にはフッ化ナトリウムの水溶液)ですが、これは「フッ素樹脂」ではありません。
これらのことから、「フッ素樹脂コーティング」と呼ぶのに適切な範囲は、フッ素樹脂の共通した特性(耐熱性、難付着性、滑り性、耐薬品性)を発現しているフッ素樹脂塗料系と変性フッ素樹脂塗料系ではないかと思われます。
※フッ素コート(フッソコート)、フッ素加工(フッソ加工)といった表現は、幅広く使用されており、上記の内容を紛らわしくし ています。フッ素樹脂に誤った認識を持たれている方や目的にふさわしくない「フッ素コート」を採用し、トラブルを発生させることも少なくありませんので、 十分注意して下さい。
※テフロン®は米国デュポン社の登録商標です。
参考文献:
後閑昭男,「フッ素樹脂コーティング」,防錆管理,Vol.48,No.3,2004別冊 より抜粋、編集